粘弾塑性体モデルによる仮想物体の構築

 

 

  これまで,仮想物体の研究では粘弾性体モデル(Kelvin-voigt model)で構築されてきました.しかし,その多くは物体が壊れないという仮定で成立していました.我々の研究グループでは,早くからモデルに状態変数を定義して物体の破壊表現を試みてきました.

 これを発展させ,モデルに塑性を組み込み,外部からの力によって,自然に切れてしまう粘弾塑性体モデルを提案しました.このモデルを使うと左図のように自然な破壊状態が再現できることを確認しました. 

 計算に使ったコンピュータの性能の都合で,CGの画質が悪いのはご容赦ください.

粘弾塑性体モデルの説明

画像をクリックするとビデオが

再生します↓↓↓↓↓↓↓↓↓

説明

大きな球を小さな球が貫通します.質点同士の弾性衝突とモデルの自然な破断によって大きな球の中身が飛び出します.

大きな球が仮想床面の上にある直方体の物体に落下して崩壊させてしまいます.バランスが崩れた直方体はさらに,倒壊しそうになります.

薄い板を外部から操作して,仮想床面に置かれた球を切断します.切り方に迷いがあるので,「刃こぼれ」します.

採血シミュレータを目指して開発を始めました.まだ針がボロボロになります.

ここから下はMS-DOSで開発したものです.コンピュータの性能が低く,塑性を表現できなかった頃のものですが,ある程度まで破壊を表現していました

 緑の丸は質点を表しており,白い線がバネを表しています.6個の質点と7本のバネによる1次元の運動です.

 上のバネのうち,2本が切れた状態をシミュレートします.バネが切れているので,右側の2つの質点には運動が伝播しません.

 これは,運動中にバネが切れる場合のシミュレーションです.切れた瞬間の各質点の速度,すなわち運動エネルギーは保存されますが,切れたバネの弾性エネルギーはなくなります.

 切れた後も,その瞬間の状態を引き継いで運動が継続します.

 上のバネを2次元で組合せて使います.

 正三角形にしたのがミソです.正方形のほうが見た目はきれいなのですが,形状の維持が出来ない場合があるのであまり良い形態ではないようです.

 左上に質点を引っ張って,離した場合の振動の伝播をシミュレーションしています.

 上で構成した平面から,運動中に一部が切り離されます.切り離された断片は形状変化しながら,空間内を移動します.

 三次元で構成すると正四面体構造になります.この構造だと,形状が維持されます.

 2次元までの構成では,四方が固定されていましたが,これは空間内に浮かんだ状態を想定しています.

 表現の都合により,質点を引っ張って,離していますが,むしろ左上の質点に打撃を与えた場合と考えていただけば良いでしょう.

 上の3次元仮想物体から,一部が切り離されます.切り離された瞬間の作用反作用で,お互いが離れるように離れていきます.

 運動がなかなか収束しないのは粘性定数が小さいからです.

 これは,おまけです.ビデオだとよく分かりませんが,画面の下向きに重力加速度があり,さらに画面の下方には床面が設定されています.

 床にあたると弾みます.形が線対称でないので,「不安定」なのですが,なんとか倒れないで弾むようです.

条件は上と同じですが,バネの弾性定数だけが小さくなっています.

これにより,床に衝突瞬間につぶれたようになり,重心が移動します.

 「不安定な」物体はその時バランスを崩して倒れてしまいます.